毎年お盆になると私の実家では、ナスとキュウリに割り箸を刺して動物に似たてて仏壇にお供えします。
最近ではそもそも仏壇がない家や、時代の流れでそういったことを知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は野菜の栄養などの解説ではなく、文化や風習の側面から解説していきたいと思います。
なぜお盆にナスとキュウリが必要なのか、意味は?名前は?地域で違うの?などお盆に使う茄子と胡瓜についてお伝えします。
[mokuji]お盆のナスとキュウリの名前
毎年、お盆の季節に飾るお供えのナスとキュウリ。動物っぽいけど、そもそも名前はあるんでしょうか?
実はこのナスとキュウリで作られた動物のお供え物は、「精霊馬(しょうりょううま)」という名前がちゃんとついています。
ちなみにこの精霊馬やお供え物を飾る台を精霊棚(せいれいだな)または盆棚(ぼんだな)と言います。
お盆のナスとキュウリは牛と馬だった
実はお盆のナスとキュウリはそれぞれ牛(ナス)と馬(キュウリ)に似せて作られていたんです。
そう言われてみればナスは牛っぽくズッシリしているし、馬は細くしなやかな感じがしないでもない。
お盆のナスとキュウリの意味って何なの?
では肝心のナスとキュウリで作ったこの精霊馬は、何のために作るのかという疑問です。
そもそもお盆という風習は、あの世に行った先祖を年に一度家に戻ってきてもらい、お盆期間中は先祖の霊を祀る行事のことです。
ご先祖が生きている者に影響を与えるという日本古来からの、祖霊信仰と仏教が融合した行事なんです。
その先祖の霊がお墓から家まで来て、家からお墓に帰る時の乗り物こそ、この精霊馬なんです。
ナスは牛
動物の乗り物がナスとキュウリで、牛と馬。ここで思うのはどっちか一体でいいのでは?ということ。これにもちゃんと意味があります。
あの世とこの世を繋ぐ役割がある精霊馬ですが、牛は馬より遅いということで、お盆でお家に帰ってきた先祖がゆっくりとお墓に帰って行く為とされています。
またお盆のお供え物などを持って帰るのに、牛のほうが積めるからなどと考えられています。
キュウリは馬
逆にキュウリは足の速い馬に見立てられ、あの世からこの世に早く帰ってこられるようにとの想いから、作られています。
このように亡くなった方の為や、まだ生きている人の想いなどがお盆には込められていると思うと、日本人としては大事な風習だなと感じます。
ダイチのワンポイントアドバイス精霊馬がナスとキュウリなのは、形が似ているというだけでなく、お盆の季節に沢山採れて、庶民も手に入りやすい物だったからだとも言われています。
お盆のナスとキュウリは地域や宗派でも違う?
実はお盆は地域や宗派でも少し違います。というのも必ずナスとキュウリで先祖を迎えたり送ったりするわけではありません。
お盆は地域でも違う
九州では長崎などの「精霊流し」。京都では大文字焼きで有名な「五山送り火」。
日本全国の夏祭りで踊る「盆踊り」も元々は全部先祖を迎え入れたり、送り出す為の行事なんです。
また一般的にはお盆は8月15日とされていますが、地域によっては旧暦にあたる7月15日に行われる場所もあります。
実際、私の実家の地域ではこの旧暦にあたる7月にお盆の行事を行っています。
お盆は宗派でも違う
お盆の形は宗派でも違ってきます。浄土真宗という仏教の宗派では、お盆には特別な飾りやお供え物はなく、お坊さんに読経してもらう程度でお盆だからと言って何かするわけではありません。
その理由は、浄土真宗では亡くなった先祖は極楽浄土にいるので、迎えたり送ったりする理由がないと考えられているからです。
簡単に言えばいつも側にいるよって事ですね。なので精霊馬もなければ、送り火や迎え火などもないという考えなんです。
まとめ
[matome] ・お盆のナスとキュウリのお供え物は精霊馬という。・お盆では精霊馬に乗り亡くなった先祖が行き来すると考えられている。
・お盆のナスが牛なのは、ゆっくりお墓に帰って欲しい、なるべく長くこの世に居て欲しいという願いが込められている。
・お盆のキュウリが馬なのは、なるべく早くあの世から帰ってきて欲しいという願いが込められている。
[/matome] いかがだったでしょうか?お盆のナスとキュウリについて解説してきましたが、普段何気なく料理に使っているナスとキュウリが、こんな風にも使われているのは、なんだか面白いですよね。
私の実家は田舎なので、そういった風習が根強く残っている地域で、祖母も健在なので今でもお盆はナスとキュウリで精霊馬を作り、お供えしています。
今年もきっとお盆には、ナスとキュウリの精霊馬で祖父は帰ってくるかなぁ、なんてこの記事を書きながら思っています。
今後もお盆に限らず、日本の文化と関係している野菜は沢山有るので、どんどん紹介していこうと思うので、楽しみにしていてくださいね。